April 23, 2010
クセナキス- 音楽の建築家 / Iannis XeNAKIS
クセナキス- 音楽の建築家 @東京芸術大学奏楽堂(2010年4月22日)に行ってきました。
プログラム
《ピソプラクタ》PITHOPRAKTA, 1955-56
《イオルコス》IOOLKOS, 1996, 日本初演
《メタスタシス》METASTASEIS, 1953-54
《シルモス》〜弦楽合奏のための SYRMOS for strings, 1959
《デンマーシャイン》DÄMMERSCHEIN, 1993-94, 日本初演
指揮:ダグラス・ボストック(Douglas Bostock)
*アイスランドの噴火のために、指揮者がジョルト・ナジ(Zsolt Nagy)から変更
オーケストラ:藝大フィルハーモニア
やっぱり、生で聞いて初めて感じること色々あります。おもしろかったのですが、建築との関係で聞いてやろうという、こちらの勝手な刷り込みがあるものだから、実際にどのぐらいのスケールの空間を想定した曲なのかとか、どこに座ったら良かったのかしらとか、そんなことが気になっていました。小さい編成の演目などは、意外とボリュームが小さいものだから、最初不思議でしたね。
1曲ごとに、だんだん耳が慣れてくると、ウア〜ンとずれていく、うねりの曲線を感じられるようになってくるのが不思議。
演奏後、お食事をご一緒したT氏がクセナキスは「結局音楽は時間とは関係なくアルゴリズムである」と言及していたという話をされていたけれども、ある規律、手順、構造をもったアルゴリズムからなる、ちょうど均衡のとれた状態の形状が、うねり、少しずつ広がり、さまざまな波状のボリュームとして変化していくように感じられ、本当に視覚的にもみえてくるような気がしました。
Klangfarbeという言葉はあるけれど、我々にもそんなものが感じられるのだから、音の専門家には、あるパラメータの変化が、もっと色のディテールまで感じられる具体的な形状の変化として、刻々と頭の中に広がっているのかしら。。。などと考えてしまいました。
残念ながらプレトークが聞けなかったのですが、演奏用の通常の楽譜とは別に、グラフのような作曲のダイアグラムもあったそうで、そこらへんのことは調べてみたいものです。
ひさしぶりに、楽しかったですね。。。
追記:
結局コンステレーションではなくて、コンピュータグラフィックスでなにか曲線を描いて回転させたときの曲面立体みたいな感じ。座標と座標のコンポジションから構成するのではなく、座標間のあらゆる値が埋まっている。本当に微細な数値の違いが、連続性による面を生成している。
演奏している人達は、どうなのか?通常音楽の場合、タクト(座標)とタクトの関係、その楽器の余韻(響き)の残し方といったことが大切なんだろうけれど、全ての値が埋まっているような規律の中で、どこで音のきっかけをつかんでいるのか?演奏する側に演奏法の違いがあるのかということにも興味を持った。同じ会場にいた建築と音楽をやっている卒業生がよく観察していて、コンマスだけがリズムを足で取っていたと言っていたけれども、拡張・縮小をつづける連続曲面の規律とはどういうものであろう。音の高低差とか色々あるんだろうけれど、どのように基準を見つけていくにしても、今までとかなり異なる規律(アルゴリズム)で「作曲」された音楽と、それを「演奏」する際に起きる演奏法の解釈といったことを、今度音楽の専門家に聞いてみたい。
投稿者 raumraum : 12:36 AM | コメント (0)
January 03, 2010
三菱一号館竣工記念「一丁倫敦と丸の内スタイル展」@三菱一号館
三菱一号館竣工記念「一丁倫敦と丸の内スタイル展」
@三菱一号館, 2009年9月3日-2010年1月11日
2010年春の開館に向けたプレ展示。1894年ジョサイア・コンドルによって設計された三菱一号館は、1968年一部の部材を残し解体されたが、2003年より丸の内の再開発に向け、当時の図面や資料をもとに、当時の建物を復元設計計画が持ち上がり、2009年春竣工された。
本展では、江戸末期から現在に至る丸の内一帯の都市計画の変貌と、復元計画にあたり、参照された図面(コピー)、資料、写真、当時の建物部材の一部が公開されている。
余談だが、コンドルは河鍋暁斎に絵を習っていたんですね。おもしろい人に、師事するなと思いましたが、上手だったようです。
それとやっぱり、建築図面のアーカイヴとか重要ですね。。。(実感)
投稿者 raumraum : 10:33 PM | コメント (0)
江戸の彩り@浮世絵太田記念美術館 / The Color of Edo
開館30周年記念「江戸の彩り - 珠玉の浮世絵コレクション」
@浮世絵太田記念美術館, 2010年1月3日-2月24日
開館30周年記念で、太田記念美術館が収蔵する浮世絵の中から、150点余りを厳選し、浮世絵初期〜近代までの変遷を紹介している。前後期日程で、巻き返し(頁替え)以外は、全て入れ替わるので、両日程見た方がいいかもしれない。
着物の描写において大胆な紋様構成から陰影を入れるようになるまでの変化、江戸末期頃のものに見られる近代日本画との繋がりを感じさせる背景・風景描写の変化など、細かく見ると発見がいっぱいです。前後の時代の画風を知っているとより楽しめるかもしれません。
版本がおもしろかった。喜多川歌麿の『潮干のつと』とか、文字の入り方と画面描写のきめの細かさがかっこいいし、うまい。窪俊満『百さへつり』や葛飾北斎の『春のみやひ』に描かれた波はエンボスになってました。
それにしても歌麿は、他の浮世絵をみても、卓越した技術に基づく細かい部分の描写力はピカイチ。ちょっと別格。また、北斎87歳のときの『羅漢図』は、もういっちゃってます。北斎は各時期において、常にイノベーターですけど、晩年の画風は、囚われるものもないような超越した奔放さ、力強さがあってすごいですね。
軸の表装も見事なものがあるので、ぜひご覧あれ。